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第二曲「ストーリー」

第9話「湾岸署大パニック 刑事青島危機一髪」


 ビルの周りには野次馬が集まり、ビルの屋上を見上げている。そこには自殺をしようとしている青年がいた。現場にやってきた青島と和久はなんとか青年の自殺を思いとどまらせることに成功する。青年を湾岸署につれてきた青島はすみれと供に、妻を殺した殺人事件の容疑者の愛人を湾岸署でマスコミから保護するように命じられる。

 愛人の住むマンションはマスコミでごった返していた。わたしは事件とは関係ないと言い張る愛人・武下純子であったが、エスカレートするマスコミと住民の騒ぎに耐え切れず、すみれの協力を得てマスコミを逃れ外にでることに成功する。

 湾岸署にやってきた武下だがわがままぶりは変わらない。青島は武下を早く引き取ってもらおうと、警視庁の室井に電話をかけるが、室井は忙しく電話にでてはくれない。

 とうとう報道陣が刑事課までやってきた。なんとか追い返すものの、青島は妙な視線を感じる。鋭い眼光でこちらを見ている男がいる。あきらかに報道の人間ではない。

 翌日、まだ湾岸署には大勢の報道陣がいる。そして青島は昨日の妙な男を再び見つける。青島は気になり、本庁に報告するが忙しいと電話では相手にされない。青島は写真を撮り、本庁に送ることにした。

 そのころ警視庁では事件の裏づけに追われていた。室井は一人の捜査員から報告書を受け取った。その捜査員は言った。「被害者のお兄さんだけ話が聞けませんでした」。事件の後、行方不明になっているそうだ。

 青島らには武下の保護を終らせていいという指示がでる。青島は不審な男からに関しても本庁から連絡も来ないので事件とは関係なかったと安心する。

 警視庁では室井のもとに被害者の兄の写真が持ってこられた。そして湾岸署から送られてきた不審な男の写真も。二つとも同じ顔である。湾岸署で青島がみた不審な男は被害者の兄・佐伯である。「何ですぐ報告しなかった!」「…別にたいした事じゃないと思って」「どこの署だ?」「空き地署です」。室井の顔に緊張が走った。

 やっと帰ることができるようになった武下は「だから警察は嫌いよ」と捨て台詞をはいて部屋からでようとする。しかし武下の目の前には佐伯が立っていた。「お前も死んだ妹のとこへ行け」。彼の手にはナイフが握られていた。

 青島は佐伯の存在に気がつき、佐伯に飛びついた。転がる青島と佐伯、もみ合いになり佐伯が青島の胸にナイフを突き刺した。青島は地面に倒れこんだ。そして佐伯の前には雪乃が立っていた。雪乃は棒立ちになり逃げることができない。

 青島は刺された傷を押さえながら佐伯に飛びついた。そして和久が佐伯の手をける。ナイフは佐伯の手から離れた。ナイフを無くした佐伯に捜査員らが飛びかかった。そして佐伯を取り押さえることに成功する。

 青島は雪乃に抱きかかえられていた。すみれは青島のネクタイを緩めてやる。「すみれさん、おかしいよ。死ぬ時ってこんなもんかな、思ったより痛くないんだ…」。押さえている胸の出血はそれほどひどくない。青島は胸のポケットからお守りをだした。お守りはさされて穴が開いていた。

 「これが守ってくれた…」。お守りがナイフの刃から守ってくれたのだ…。純子はすわりこんで言った。「何よ、これ…何なのよ…」。

 佐伯は和久の取調べを受けていた。「被害者のお兄さんだな? いいか悪いがあんたには同情しないよ。日本の法律は復讐認めていないんだ」。取調室に雪乃が入ってきた。来るなという和久に雪乃はいった。「私に話をさせてくれませんか。私も被害者の家族です。気持ちわかるんです」。雪乃は佐伯の方へ向いて言った。「死んだ人は帰ってこないんです」。

 室井が被害者の兄が湾岸署に来ていることを電話で伝えてきた。青島は所轄に情報が降りてこないことに憤りを隠せなかったが、袴田が電話を変わり事無きを得ようとした。しかし袴田も思わず言ってしまう。「私の部下の命を何だと思ってんだ!」

 「感謝する。助けてくれて」。そういうと武下は毅然とした態度で帰っていった。取調室からは和久が肩を落とした佐伯をつれてでてきた。復讐なんてもうしないと雪乃と約束をしたのだ。刺されたことを立件するのかと和久に聞かれた青島は、「りんごむいてて包丁刺しちゃったって言います。労災おりりゃ何でもいいや」と答えた。そして湾岸署はいつもどおり仕事に戻った。

 青島はにこにこと傷ついたお守りを縫いながらふと思った。「オントに労災おりるよな…?」





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