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第二曲「ストーリー」

第7話「タイムリミットは48時間」


 すみれは仮眠室に雪乃を連れて行った。心配そうに座っている雪乃に対してすみれは言った。「青島君、やること大胆だけど、信念曲がっちゃいないから。ま、迷惑かかるのはいつもこっちだけど」。雪乃の顔に少し笑みが戻った。

 「本店と同じ捜査したって負けるに決まっている。支店には支店のやり方があるんだ」という和久に青島はついていき高級レストランの地下に進んでいった。そこにはは非合法のカジノバーがあった。客がバカラのテーブルを囲んで札束が行き交っている。部屋の奥の暗闇に一人の男が座っている。和久と青島はその男の前に行った。その男は“もぐら”と呼ばれる六本木のドンであった。以前傷害事件で和久にお世話になったそうだ。和久は岩瀬の情報をもぐらから聞き出した。厚生省の大河内と言う男が岩瀬をおっているらしい。

 翌日、和久と青島は本庁の捜査員に付けられていることに気づくが、和久の協力を得て青島は尾行を振り切り大河内という男と会うことに成功する。

 その頃湾岸署では真下やすみれができるだけ取調べを引き伸ばし、雪乃を本庁に引き渡さないようにしていた。一倉はそれを見て室井に「ここの連中は本庁を目の敵にしている」とぼやく。所轄が本庁の足をひっぱることに不満を漏らしていると室井はお互い様だと答える。「室井お前、どっちの味方だ」と聞く一倉に対して室井は言った。「警察の味方だ」。

 大河内は杉並署で和久に指導された本庁の警察官であり、今は人事交流で厚生省に出向している。大河内は岩瀬の恋人4人のリストを和久への恩返しだといって青島に渡した。そして大河内は言った。「和久さんに伝えといてください。杉並署で最後に言われた言葉、今も忘れてないと。正しいことをしたければ、えらくなれって」。

 その夜、留置場の中で夕食をとっている雪乃の前に、留置人用の食事をもって青島がやってきた。青島はお守りを雪乃に渡しながら、捜査がうまくいっていないことを正直に言った。大河内から貰ったリストに載っていた女性はすでに本庁にあげられていたのだ。しかし青島は雪乃のクチからリストには載っていない女性の名前を耳にする。墨田綾子。

 翌日、青島は「湾岸電子機器」と名乗り墨田綾子の勤務する会社に潜入することに成功する。そして社内では社員を装い、墨田綾子のいる海外事業部の場所を突き止め、彼女に関する情報を入手する。墨田綾子の前では「勝どきジュエリー」と名乗り、婚約者から指輪を選んでもらうように頼まれたと言った。婚約なんかしていないと言う墨田に対して岩瀬修の名前を出した。その名を聞いた墨田は会社を飛び出し岩瀬の下へ向かった。墨田は青島の作戦に引っかかったのだ。青島は墨田の後を付けていった。

 青島は墨田の後を付けていって岩瀬があるホテルに潜伏していることを知った。青島は和久に連絡をとり協力を求めた。和久は言った。「判った、俺が行くまで手をだすな。いいか青島、逮捕のときが一番危険なんだ」。

 形式上の取調べをしている真下と雪乃の前に一倉が雪乃の身を引き渡すようにとやってきた。まだ送検していないと拒否する真下に対して警部より下の警部補には取り調べの決定権をもっていないと一倉は告げた。しかし真下は思い出したようにポケットから一枚の紙を取り出した。それは真下が警部に昇進した辞令であった。「本日付で警部に昇進しました! 今日から僕の決定は誰も邪魔できない!!」。

 青島は和久と供に岩瀬が泊まっている部屋に入っていった。「勝どきジュエリーの青島です」。岩瀬はナイフを手に持って構えた。青島はコートを脱いで岩瀬に投げつけて、飛び掛った。「青島ぁ!!」。和久の声が部屋に響いた。

 48時間がたち、一倉が雪乃を本庁に連れて行こうとしたその時、青島と和久と岩瀬が歩いてきた。岩瀬の手は手錠ではなく青島のネクタイで縛られていた。青島と和久は服が切れ、血がにじんでいる。「まだ逮捕していません。本店にお渡しします」。

 岩瀬は本庁に引き渡され、雪乃は室井の計らいにより本庁に連行されることを逃れた。青島はもちろん雪乃の公務執行妨害の容疑の送検を見送り、彼女を釈放した。雪乃は室井に礼を言った。室井は雪乃に何かを言おうとしたが言葉が見つからず、そのまま湾岸署をあとにした。

 雪乃らも帰っていった後、青島は和久に大河内から言われたことを言った。和久は青島に聞いた。「おまえも正しいことしたいか?」。そしてはいと答える青島に言った。「なら、えらくなって本庁行け。…30年平の刑事やってたおれの結論だ」。意味をまだ理解することができない青島をよそに和久はそういうと湾岸署を後にした。





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