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第二曲「ストーリー」

第6話「張り込み 彼女の愛と真実」


 湾岸署では春の交通安全キャンペーンとしてタレントの篠原ともえを一日署長として迎えていた。はしゃぐ署長らをよそに青島と和久は生活安全課保安係長の篠木とその部下八木に大麻の売人を摘発するため捜査の協力を依頼された。

 警務課で張り込み資材を借りて張り込み用のアパートに向かった。その夜、被疑者のマンションを監視しながら青島は和久に同僚の警察官が殺された事件について聞いた。六年前和久がまだ八王子署にいた頃、強盗事件を供に捜査していて刑事が犯人に刺されたのだ。「犯人の居場所判って俺が行くまで待てって言ったのに…一人で犯人の部屋に乗り込みやがった。俺の責任だ…。逮捕の瞬間が一番危険なんだときちんと教えなかった。俺が殺したようなもんだ…」。和久は望遠鏡を覗きながら言った。「もうすぐ定年だから忘れようとしてた。そしたらお前が来た。そいつのことを思い出した。また忘れられなくなった…」。ちょうどその時被疑者のマンションの部屋に明かりがついた。被疑者が帰ったきたのだ。しかしそこにいたのは柏木雪乃だった。

 二日後青島と和久はまだ被疑者のマンションと、雪乃を張り込んでいた。青島の携帯がなりすみれから連絡が入った。室井が青島に会いたいといってきたそうだ。

 青島はすみれと張り込みを交代し、室井に指示された場所に行き室井を待った。そこへ室井はヘリでやってきた。室井は新宿署管内で営業マンが殺された事件について元営業マンの青島に意見を聞きにきたのだ。青島は営業マンの基本ノウハウを教え、被害者の会社と取引先の帳簿を調べた方がいいと教え、今自分が扱っている事件は、以前湾岸署管内で起きた殺人事件の被害者の娘が絡んでいることを告げた。しかし室井はその娘のことは覚えていなかった。

 青島が張り込んでいるアパートに戻ってくるとそこには篠木と八木がいた。雪乃のもとに小包が届いたのだ。篠木らは家宅捜索令状を手に雪乃の部屋に踏み込んだ。雪乃が状況が理解できないまま捜査が続けられ、小包が探し出された。そしてその小包の中から大麻が発見された。そして雪乃は署に連行されてしまった。

 湾岸署に戻った青島は和久の立会いを条件に雪乃と五分間だけ話をする許可を得た。青島と和久は雪乃をつれて取調室へいき、彼女に事件の真意を尋ねた。しかし雪乃に判ることは小包の送り主は、以前ロサンゼルスにいた頃の恋人で、大麻をやっている岩瀬と言う男だった。和久は雪乃に対して聞いた。「本当に大麻とは関係ないか。亡くなったお父さんに誓えるか?」 和久の問いに対して雪乃はしっかり「はい」と答えた。

 取調室から戻るとそこには室井と警視庁の薬物対策課の管理官・一倉がいた。一倉は岩瀬を追っており、雪乃を引き渡すように言った。

 一倉は彼女は事件と関係ないという青島を無視し、雪乃をむりやり警視庁に連れて行こうとした。雪乃は父親を殺されたときに受けた取調べの辛い思いがよみがえり震えていた。しつこい青島を一倉は押しやり雪乃を連行した。

 「柏木雪乃!!」 青島が刺々しく笑いながら言った。「やっぱりお前そういう女だったのかよ。薬中なんだろ、お前?」。すみれらは唖然と青島を見る。「信じなくて良かった、おまえみたいな軽薄で馬鹿な女。岩瀬って男どこにかくまった? え?」。雪乃は思わず青島の頬を叩いた。青島はそれを黙って受けた。

 「みなさん、見ましたね」。青島はいつもの顔に戻って言った。「職務質問中に暴行を受けました。公務執行妨害で君を逮捕する」。そういうと青島は雪乃の手に手錠をかけた。「逮捕したらどうなるんだ? 真下警部補?」「起訴するまで48時間以内は彼女の身柄を湾岸署で拘留できます」。

 青島はそんなことは認めないと言う一倉を無視し、雪乃を廊下に連れて行き手錠を外しながら言った。「ああするしかなかった。君を本庁には渡さない。ここで君の潔白を証明してみせる」。青島は雪乃を休ませるようにすみれに頼んだ。そして、どうするんだと聞く和久に対して青島は言った。「やるしかないですよね」。青島の顔には決意の表情が出ていた―。





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