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第二曲「ストーリー」

第5話「彼女の悲鳴が聞こえない」


 湾岸署では青島らが喧嘩をしていた女子高生4人を取調べをしていた。仕事を終えたすみれは「ひとりで大丈夫。金曜日だから」と言って帰っていった。

 すみれが暗い道を歩いてふと気配を感じて振り返る。しかしそこには誰もいない。安心したすみれの前にフードを深くかぶった男が立っていた。「火曜日じゃなくても現れるよ…」。

 湾岸署刑事課に110番受理台係官から連絡が入った。「警視庁から各局。江東区江葉町5丁目路上で倒れている女性を発見。女性は殴られている模様。なお女性は第一発見者に自分が警察官である旨を申告した…」。刑事課内に緊張が走った。「すみれさんの家、江葉町だったな…」。全員部屋を飛び出していった。

 病院に着いた青島は、すみれは左腕と顔に怪我を負っているものの、気丈な顔を失っていないのを見て安心する。青島は“お守り”をすみれに渡した。「君を守ってくれるから…。」

 翌日青島と和久は容疑者・野口達夫のアパートの前で張り込みをしていた。野口はすみれが三年前逮捕した男である。一年前に出所してそれ以来すみれをずっと付け狙っていたのだ。すみれはその三年前の事件で怪我を負い、その傷のことを気にして婚約を解消したのだ。犯人を捕まえない限り、すみれさんの新しい人生は始まらないと和久は言った。

 署長、副署長、袴田課長、魚住係長、真下、和久、青島の7人で捜査会議を終えた後、青島は真下に同様の被害届けがでていないか捜査一課のデーターベースを調べてくれと頼んだ。捜査一課のデーターベースを勝手に見るのは違反だが、すみれのためだと思い真下は実行する。

 ちょうどその頃、すみれ宛にビデオテープが届けられた。野口が送ってきたのだ。青島らといっしょにすみれがそのビデオを見るとそこには野口本人が映っていた。野口はテレビアニメの美少女ピンクサファイアとすみれを混同していた。そして野口がいる場所はなんとすみれの部屋の中であった。

 青島と和久が野口の部屋を家宅捜査しているその頃、袴田と魚住は警視庁の室井に呼び出された。都内の所轄署で女性がストーキング被害の後、暴力を受けた事件が二件あり、容疑者のモンタージュを作製したところ野口にそっくりであった。そして魚住らは、すみれの事件と、この二件の事件が同一犯の犯行として警視庁が捜査本部を設置することになることを告げられた。

 事件の主導権を警視庁にとられたことを知った青島らは課長に抗議をするもののもちろん聞き入られることはなく捜査一課の刑事の手伝いをさせられることになった。青島は捜査一課の刑事と供に車で被害者の家へ張り込みに向かった。その途中歩道橋の上で雪乃が男と話し合っているのが見えた。雪乃は男に向かって何かを訴えているようであった。

 本庁の刑事が車の中で張り込みをしている間、和久と青島は公園で待機を命じられた。和久が雪乃のことについて青島に言った。「彼女は一生父親を殺された無念さを背負っていくんだ。お前には助けれられない」。そして青島のポケベルに真下からメッセージが入った。「BINGO」。

 署に戻った青島は真下と供にすみれを呼び出した。野口らしい男のピンクサファイアに関するホームページに、すみれの写真を少し修整して「あたしもピンクサファイアに似てるのよ」とメールを送ったところ、野口から「会わないか」と返事が来たのだ。おとりになることを怖がるすみれに対して青島は言った。「自分で解決しなきゃ、いつまでたっても眠れないんだよ。刑事だろ? この仕事好きなんでしょ?」。

 野口との待ち合わせの場所の地下駐車場ですみれは周りを警戒しながら歩いていた。青島も時折無線ですみれと連絡を取りながら、すみれの後ろを歩いていた。すみれは青島から借りたお守りをぎゅっと握り締めた。

 青島が野口らしい男を見つけ、後を追うが見失ってしまう。そして青島はすみれも見失ってしまった。

 青島はやっとのことですみれを見つけたが、すみれの後ろには野口が立っていた。振り返ったすみれに野口は言った。「君か…。また会えて嬉しいよ」。野口はナイフを持って笑っていた。青島は野口に突進した。野口を押さえながらすみれに手錠をかけるように指示したその時、突然強烈な光が照らされた。

 気がつけば三人は投光車とパトカーに囲まれていた。そしてそこには室井の姿が。「そこまでだ! 野口!」室井の声が響き渡った。そして捜査員が野口に殺到しのしかかって手錠をかけた。

 本庁になぜ連絡しなかったと責め立てた室井に対して青島はいった。「すみれさんに逮捕させたかったんです。彼女は被害者なんです。他の人が逮捕しても彼女の傷は消えません。」

 野口は「またね」とすみれに微笑みながら連行されていった。すみれは野口の前に歩み寄り尋ねた。「ピンクサファイアの得意技は?」「サファイアキックで悪を倒すのさ」。

 その瞬間すみれは野口を思いきり蹴った。野口は地面に倒れこんだ。すみれが強く見下ろすと野口は初めて怯えてた。青島も野口の前に歩み寄り「俺の顔をよく覚えておけ。またやったら今度は俺が刺すぞ」と言った。野口は震えながら「もうしません」と答えた。

 青島は室井に迷惑をかけたことを謝った。室井は「彼女を送って行きたまえ、本庁の命令だ」と青島に言った。

 ぽろぽろ涙を流しながら歩いているすみれに青島は「もう後ろを歩いても平気ですね」と微笑んだ。すみれは強気で「何でもっと早く助けてくれなかったの? 殺されるところだったのよ、このドジ!」と青島に向かって怒鳴った。そしてすみれは青島に借りていたお守りを返した。そしてすみれは青島に向かって言った、「ありがと」と。





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