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第二曲「ストーリー」

第4話「少女の涙と刑事のプライド」


 声がでるようになり退院することになった雪乃を見送った青島は湾岸署に戻るなり、捜査一課の応援捜査員に指名された。青島が関わることになった事件は二年前に起きた渋谷区の連続強盗傷害事件。一度捜査本部は解散したが、最近になって容疑者・大木茂が目撃されたため再び捜査一課が容疑者を追うことになったのだ。

 やる気満々で警視庁にやってきた青島だが、捜査一課の刑事たちにひどい扱いを受け「捜査したけりゃひとりでやれ」と言われ仲間はずれにされしまう。

 青島がバーで事件の容疑者を一人で捜しているところにすみれと真下がやってくる。真剣に張り込みをする青島をすみれが茶化していると、バッグの中の金品を盗もうとする男にすみれは気づく。すみれはその男を窃盗の現行犯で逮捕し、警察手帳をその男に見せた。

 しかしそのバーに大木が現れたのだ。すみれの警察手帳を見た大木はすぐ店を出て行った。それに気づいた青島も大木を追うが一足遅かった。

 事情を知った室井たちが青島の前にやってきてどうして容疑者の近くで警察手帳をだしたのかを問い詰めた。すりを逮捕するためだと知った他の捜査員たちは捜査一課は大きい事件を追いかけている、クズみたいな事件に手を出したってしょうがないと青島に言った。室井は島津捜査一課課長に所轄の新人を入れたのは間違いだったと責められてしまう。

 次の日、署に向かう気がない青島は海岸を歩いていると雪乃と偶然出会う。そこで雪乃の父に対する思いを聞き、青島は雪乃にちからになることを約束する。

 湾岸署管内にはもういないと思われた大木だが、彼と接触するチャンスがめぐって来た。湾岸署管内のクラブのオーナーにお金を借りに来ることがわかり、警視庁は前線本部を湾岸署に置いた。室井は周囲の反対を押し切り再び青島を応援捜査員として迎えた。

 青島はどうして自分のことを捜査一課によぶのかと室井に訊ねると、室井はこう答えた。「君は警察は会社じゃないと言ったな。うちの刑事たちを見てみろ。警視庁の捜査一課だというプライドばかり高くて手柄を立てることばかり考えてる。成績と出世のことしか考えてない。この事件でいい仕事をしてくれたら私は君を捜査一課に推薦するつもりだ。 推薦するためにはまず仕事ができることを見せてくれ。この事件のことだけを考えるんだ。犯人逮捕にすべてを優先しろ。」

 青島と捜査一課の刑事たちがクラブで張り込みをしているその頃、湾岸署の刑事課ではめずらしく魚住、和久、すみれ、残業をしていた。みんな刑事課の横の応接室におかれた前線本部の様子が気になっていた。真下は捜査一課の本部と現場の無線を勉強と称して盗聴していた。

 クラブに容疑者・大木がやってきて、大木が店をでたら逮捕せよという指示が捜査員たちに下された。青島は近くで揉め事が起こっていることに気づくが室井は無視をしろと指示をだす。女の子が男に殴られているのを見ると青島は室井が制するのを聞かず飛び出していった。室井は捜査員たちに容疑者を確保することを命令するが、店内は騒ぎになり容疑者にはまたしても逃げられてしまう。

 無線を盗聴していた真下は、青島のせいで容疑者を取り逃がしたことを和久らに告げた。

 島津は室井に対して青島を参加させたのは室井のミスであり責任を取るべきだと責めた。そして青島にも責任を取るように命じた。「判りました。責任取ります」。青島はそういうと警察手帳と手錠を取り出した。

 「女の子が殴られてたんだ。それを黙ってみてろっていうんですか、あんたたちは…。犯罪にでかいとか小さいとかあるんですか? 目の前で苦しんでる人がいてもでかい事件のためには無視しろって言うんですか? 俺にはできない…」。

 「これもってると人助けられないなら…こんなもんいるか!!」 青島は警察手帳と手錠を地面にたたきつけ、きびすを返して立ち去っていった。

 すると向こうの方から道を歩いてくる五つの影が見えた。

 その影はすみれと和久と真下と魚住。そして魚住に腕をとられた大木だった。「ひょっとしてあんたらが捜している男はこいつかね?」和久が言った。「あたしたち、この街長いもんだから路地裏までよく知っているんだ」とすみれ。和久らは大木を捜査一課に引き渡した。そして女の子を殴っていた男を湾岸署で引き取った。

 和久たちのおかげで容疑者を逮捕することはできたが、青島は刑事を辞める決心は変わらなかった。署に戻った青島は私物を片付け始めていた。

 ちょうどその頃、湾岸署の前で立ち番をしている森下警官の前に室井が現れた。室井は「落し物だ」といい青島の手錠と警察手帳を森下に手渡した。

 森下が室井に渡された警察手帳と手錠を青島に渡すとそれを見ていた和久が言った。「刑事はサラリーマンじゃねぇんだろ? なら上のもんのために自分の信念を曲げることはねぇ…なんてな」。そういうと和久は帰っていった。

 緒方が女の子を殴っていた男を青島の前に連れてきた。「青島さん、この被疑者どうしますか?」。青島が少し考えて言った「おれしかいないじゃん、おれが調べるに決まってんだろ。」

 その後青島は手錠と警察手帳を上着の中にしまい、クラブで女の子を殴っていた男の取調べを始めた。

 青島は取調べをしている男に言った。「ゆっくりやろうじゃないか…。おれはな、おまえのために本店に行くチャンス棒にふったんだ。ま、そのお陰でここにいるのも悪くないなって思ったけどな」。
 





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