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第二曲「ストーリー」

第3話「消された調書と彼女の事件」


 強行犯係のデスクでミーティングしていた青島らは事件発生の知らせを聞いて湾岸署を飛び出していった。しかし事件現場は道路の向こう側。そこは勝どき署の管轄であった。
 管轄が違うことで捜査できずに湾岸署に戻ってきた青島は雪乃が病室からいなくなってしまったことを知る。

 そのころすみれは交通課の圭子から引ったくり事件の情報を聞く。中学生の女の子が後ろからバックを盗られ、倒されてひざに怪我を負った。偶然、検問中だった圭子と千草が悲鳴を聞き犯人を追ったが逃げられてしまった。しかし圭子は犯人の顔を目撃しており、すみれがその目撃談をもとに犯人の似顔絵を作成した。

 警視庁では室井が刑事部長に呼ばれ応接室にやってきた。そこには室井の上司である刑事部長と、建設省の官房次官とその息子が座っていた。官房次官の息子の深見哲也が湾岸署管内で起きたひったくり事件の犯人であった。しかし深見親子は室井に事件はなかったことにして欲しいと圧力をかける。

 室井は納得がいかないが、どうすることもできずしぶしぶ湾岸署へ事件は捜査中止にして欲しいと連絡をした。

 病室からいなくなった雪乃を殺された父親のお墓の前で見つけた青島は雪乃を病室に連れて行き、つい雪乃と父親の間で何があったのかと聞いてしまう。取調べのような口をきき雪乃を傷つけてしまったことに気づいた青島は雪乃にあやまり病室を後にした。

 真下から事件に圧力がかかっていて捜査が中止になるということを聞いたすみれは、犯人を目撃した圭子をつれて事件を新聞社に告発しようとする。しかしそれを知った課長らは湾岸署のすべての出入り口を封鎖しすみれを見つけるように署員らに命令した。

 青島は緒方巡査にすみれが留置場に行ったことを聞き、青島も留置所に行くがすみれは青島の腕に手錠をかけ、手錠のもう一方を鉄格子にかました。すみれは言った「仲間呼ばれちゃ困るの」。

 青島はなんとか説得をしようとするが、すみれは全然聞く耳を持とうとしない。「官僚のやり方気に入らないんでしょ。」という青島にすみれは言った。「そんなのどうだっていい。」

 「ひったくりは許せない。中学生を怪我までさせたの。」「力の強い男が弱い女を狙う。これは暴力なの。男が力を使って女に何をしてもいいの? あたしはそういう男どもを絶対許さない。」すみれは服の腕をめくった。そこには大きな切り傷の痕があった。

 そしてすみれは3年前の事件について語りだした。すみれは3年前、後ろから襲われてバックを盗られた。すみれ自身が必死に捜査をして犯人を捕まえて送検したが、その犯人は反省してるからと2年ででてきて逮捕された火曜日にすみれの前に現れる様になった。「…怖いの…。」そう語るすみれはいつもの強気な彼女ではなかった。

 すみれたちが留置所にいることを知った署長らもやってくるが署長らの説得もむなしく、しびれをきらした室井もやってくる。どんなことがあっても告発をやめようとしないすみれに対して和久が言った「すみれさん、外してやれ。手錠は刑事にするもんじゃない。相手が違うだろ」。その和久の一言でとうとうすみれも青島の手錠を外して留置所から出てきた。

 室井は事情聴取をする変わりに父親のことは一切マスコミにばらさないという条件で引ったくり犯の深見哲也を湾岸署に連れてきた。

 深見哲也の取調べにはすみれの他、室井と青島も立ち会った。すみれの取調べに対して深見は弁護士にふきこまれたのか「僕がやりました。反省しています。」の一点張り。すみれはこんな取調べをするために今日一日怒っていたわけではないと嘆くがどうすることもできず深見を釈放する。しかし帰り際に深見が言った「パパにお礼言わなきゃ」という言葉に青島が怒り、深見の胸ぐらをつかみ壁に押し付けた。

 取調べ中の暴力行為は内規違反だと青島を制す室井にかまわず青島は言った。「パパが偉いからってな何しても許されると思うな。許してくれるのはパパのお友達だけだ。俺達現場の人間は違う。パパが官僚だろうがな女を力ずくで傷つけるようなやつは俺たちがとことん追い詰める。おまえのようなやつに傷つけられて、何年も苦しんでる女がいるのをお前知ってるか。おれたちは区別しないぞ。そこまで計算して生きてないからな」。

 取調べ室からでた深見は父親と弁護士に暴力を受けたことを告げ、弁護士は室井に事実を確かめるが、室井は「事情聴取は正等に行われた」と言った。仲間同士かばりあうのかと問い詰める弁護士に室井は言い放った。「なら裁判にかけますか。したらマスコミにばれるぞ!」

 その言葉で深見らは帰っていった。事件は無事一見落着した青島は帰りに雪乃の病院に行った。青島が今の自分の気持ちを素直に語り、部屋から出て行こうとしたときにかすかに声が聞こえた。青島が振り返ると雪乃が上体を起こしながら言った。「青島さん…。」





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